【徹底レビュー・前編】ロレックス コスモグラフ デイトナ 116500LN

Watch Review

世界で一番有名であろうクロノグラフ、それがロレックス・コスモグラフ デイトナ。

デイトナを求めてロレックスの店舗を何度も何度も訪ねることをデイトナマラソンと呼ぶようになって久しくなりましたが、いまだに人気は全くと言っていいほど衰えません。むしろ今年2023年は新型キャリバーを搭載しデザインをアップデートした新モデルが発表され、特に世間のデイトナ熱が高まっているのを感じます。

そのデイトナの中でも最も有名なのが、ステンレス素材の白文字盤(116500LN)。旧型になってしまったとはいえ、まだまだ大人気です。2022年の前半には未使用の二次価格が700万円を超え、時計バブルの象徴とも言える時計です。今回はこちらを徹底レビューしていきたいと思います。

この時計は何故人気なのか?プレ値を正当化できる価値があるのか?

このモデルは誰に似合うのか?果たしてサラリーマンに似合うのか?

当然にこうした疑問が沸き起こると思います。私MMの結論から申し上げますと、

「機能・デザインともに最高のクロノグラフ。但し、サラリーマンが仕事で使うのはやめておこう」

時計そのものとしては、信頼性もあり高級感もあり、自信を持っておすすめできます。しかし、使用する機会や着こなしは結構難しいんじゃないかな・・?と感じています。特にスーツがメインのサラリーマンのスタイルには合わせるのが結構難しいと個人的には思います。ライフスタイルや普段のコーディネイトに合うかどうか、吟味して買うべき一本です。

これは116500LNの白文字盤に限った話ですので、ステンレスの黒文字盤や素材違いであれば全く結論が違うことはあらかじめお伝えさせて頂きます。

そう考えるに至った理由を前編・後編の2回に分けてお送りします。

デイトナの良いところ

誰にとっても丁度良いサイズ感

まずデイトナにおいて、サイズ感が一番重要かつ魅力的なポイントだと私は思います。小さすぎることもなく、大きすぎない、絶妙なサイズ感がデイトナの1番の魅力です。上の写真は私の手首(手首周り16.4センチ、幅5.4センチ前後)での着用になりますが、ラグがはみ出すこともなくしっかりと収まってくれている様に見えます。着け心地も良いです。

実際のサイズを測ってみましょう。公式で発表されているケース径は40mmですが、実はベゼル直径の実測は38.5mm。Lug-to-lugは46.5mm。意外と小径で、決して大きい部類には入りません。

以下の通り、他ブランドの代表的なクロノグラフと比較してみると、どこを測っても一回り小さくまとまっていることがわかります。

デイトナ
(116500LN)
スピードマスター
(キャリバー3861)
スピードマスター
(キャリバー321)
クロノマスタースポーツ
ケース径38.5mm *実測42.0mm39.7mm40.5mm
ケース厚12.3mm13.2mm13.7mm13.8mm
Lug-to-Lug46.5mm47.5mm48.0mm47.0mm
防水10気圧5気圧5気圧10気圧
リザーブ72時間50時間55時間60時間
引用: 公式ホームページ、WatchBox

実際に着けてみると手首の収まりは非常に良かった、というのは往々にしてありますので、一概にカタログスペックで良し悪しを判断することはできません。特にこの表上ではスピードマスターの「42mm」サイズが巨大に感じられてしまいますが、Lug-to-Lugとのバランスが良いために、着けると大きさは全く感じられません。

実際に付けた感触も踏まえて、デイトナのサイジングは自信を持っておすすめできます。小柄なアジア人でも問題なく着けれて、大柄な方でも小さいとは感じさせない存在感。絶妙なバランスだと思います。最近では女性もデイトナを着ける方が増えてきたそうで、「ハズシ」の時計として使ってもカッコいいですよね。

7年経っても最新鋭の実用性能

先ほどの比較表にある通り、防水性能10気圧かつパワーリザーブは72時間を誇ります。このデイトナは2016年に発売されていますが、2023年の現在でも相当に優秀で実用性能は十分だと思います。

使用されているキャリバー4130は、「念願の完全自社生産」クロノグラフムーブメントとして2000年に登場し、2007年にアップデートされたものが116500LNに使用されています。ロレックス独自の「高精度クロノメーター規格」を採用し、平均日差+/- 2秒という驚異の精度で防水性能も10%以上のバッファを設けた基準をクリアしています。その基準の厳しさは、スイス公認の「クロノメーター基準」の2倍以上。さらに、ブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用することによって衝撃性と耐磁性能も高いとのこと。

日差やリザーブについて計測をしたわけではありませんが、実際に使用した体感では精度とリザーブはカタログ通りの高い性能を感じました。一日使ったら3日程ちゃんと動いており、時間もピッタリ。実用面ではストレスが全くなく、さすがのロレックスクオリティです。

実用性追求をするブランドという意味では、オメガも良く引き合いに出されるかと思います。スピードマスタープロフェッショナル(キャリバー3861)はマスタークロノメーター規格。日差は0~+5秒以内が求められ、15,000ガウスの耐磁性能が保証されています。MRIでも耐えられるレベルとのこと(もちろん外さないとダメですが)。さすがNASAが認めたムーンウォッチ。

防水性能に関しては、私がオメガの店員さんから聞いた話では「5気圧よりも実はもっといける」らしく、水場作業ぐらいは全く問題ないそうです(実際に買って水場で試す度胸はありませんが・・笑)。

しかし自動巻きかつパワーリザーブは約1日分の差があり、単純な「便利さ」という意味ではデイトナに軍配が上がるのではないでしょうか。「正確で丈夫で長持ち」という実用時計として必要な要素を完璧に備えているデイトナは、プロダクトとして本当に素晴らしい。(スピードマスターのような手巻きクロノグラフ、というのはまた別のロマン・・!)

バランスの取れたダイヤルデザイン

私はクロノグラフで大事なのは「ダイヤルの顔」だと思っています。特にスリーカウンタークロノグラフは、サブダイヤルのレイアウト、インデックスの形状、針の形状で大きく印象が変わります。

116500LN デイトナでは、以下の点が特徴として挙げられます。

  • サブダイヤルにはインナーサークルあり
  • サブダイヤルのサイズは3つとも均等
  • 3/6/9時位置のインデックスを短くし、サブダイヤルが文字盤全体に大きく広がるレイアウト
  • クロマライトがしっかり入っており、少しぷっくりした形状のバーインデックス
  • 中心から先端にかけて細くなり、根本は中空になっているシャープな針

無駄な余白もなく、かといって寸詰まりでもない。それぞれの要素のレイアウトバランスが非常に良いと感じます。また時分針がサブダイヤルにさしかかっても、針の形状により読み取りに支障をきたすことはなく、視認性も良いです。またバーインデックスであることも全体のデザインをすっきりさせるポイントになっていると思います。

更に細かいポイントとしては、デイトナの左右のサブダイヤルの中心は、3時と6時のインデックスを結んだ直線よりも少し上に配置されており、文字盤を目いっぱいに使ったデザインと言えます。本当に些末なポイントですが、意外とここが私は好きです。

画像を比較して見てみないとデザインの違いが中々わかりづらいと思いますので、他ブランドのクロノグラフでバーインデックスのものを以下に列挙してみます。

一枚目のスピードマスターはデイトナよりもサブダイヤルが中央寄りに配置されており、外周のインデックスに干渉しない様になっています(インデックスの大きさがどの位置でも変わらない様に見えます)。結果として中央のクロノグラフ針の運針が見やすく、計器として重きが置かれたデザインになっていると思います。実用性に忠実な姿勢がデザインにも表れているようで、こうしたポイントがスピードマスターは素敵ですよね(ほしい・・)。

続いて2枚目のゼニスのクロノマスタースポーツは、それぞれの要素としてはデイトナに非常に近いと思います。均等な大きさのサブダイヤル、バーインデックス、針の形状。決定的に違うのはサブダイヤルが多色であることと、重なってレイアウトされている点でしょうか。詰め込み感が強く、ガジェットさを感じます。

最後のグランドセイコーのSLGC001 テンタグラフは、ダイヤルレイアウトとしてはデイトナとスピードマスターの間ぐらいの味付けではないでしょうか。スピードマスターよりもサブダイヤルは大きめですが、配置はデイトナよりも中央寄りです。非常に特徴的なのは太い時針とインデックスで、力強さを感じます。しかし時針がサブダイヤルに被ると結構見えなくなるじゃ・・と思います。

完全に好みの世界ではありますが、個人的には「見た目の見やすさとすっきり加減」「サブダイヤルのバランス」から、この中ではデイトナが一番好きです。

「ツールウォッチ」と一線を画す高級感

さて、これまでデイトナの性能の良さについて触れてきました。実用性の観点からも素晴らしいのですが、さらにデイトナが人気を博した理由はその「高級感」ではないでしょうか。

まずその素材。ロレックスの代名詞である904Lスティールの輝きのあるステンレスケースと、セラミックが使われたセラクロムベゼルのツヤ感は非常に高級感があります。また仕上げを見ると、ケースとオイスターブレスには鏡面仕上げが施されており、かなりキラキラと光ります。

実際に手に取ってみると「ああ、素敵な時計だな」と間違いなく感じることができると思います。

さらに、実はデザインにも多くのドレス感のある要素が組み込まれています。それが特徴的なのはケースの側面。

ロレックスの「クラシックモデル」としてカテゴライズされているデイトジャストと比較してみますと、ケースサイドが非常に良く似ています。丸みをもった曲線的なケース本体から、ラグにかけて「キュッ」と締まったフォルム。ドレッシー強調され「ツールウォッチ」として設計されていないであろうことが分かります。

画像が荒く恐縮ですが、サブマリーナやGMTマスター2のケース側面は切り立った平面が使われています。これはこれで無骨な印象を与え、ストイック感がいいですよね。

デイトナは「素材」「仕上げ」「デザイン」のすべての点で高級感を訴求してきます。

スキのない高級クロノグラフ。果たして欠点はあるのか・・?

有無を言わさず高級さを感じられるデザインと納得の高性能の両立。これはロレックスにしか作れない製品であり、私がロレックスを好きな理由であります。

ひとしきりデイトナを褒めちぎってきたわけですが、冒頭で挙げた通り使いづらいなと思うところもあります。次回後編ではそのあたりを解説していきたいと思います。

それでは!

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